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都市の中の緑

都市の中の緑

私たちの住んでいる都市にはいろいろな緑があります。歴史を感ずる社寺境内林、個性溢れる民家の緑、公共施設や企業地の緑、まちを修景する街路の緑等様々です。緑に期待されているもの、それは緑の被覆による温度低下や乾燥化の防止、大気の浄化、生物の生息場所の提供、異常気象の緩和等ですが、私たち一人一人が緑に対して小さな一助を行なう心構えが必要となっています。今、都市の緑を健全化し、しっかりと将来を見据えたまちづくりの方策が求められています。
ここでは、当社の富塚(樹木医)より都市の中の緑について考察いたします。

  1)これからの方向性
   ア.緑の保全と創出による自然との共生
   イ.緑豊かで潤いのある快適な環境の創出、美しい景観の形成
   ウ.緑を活用した多様な余暇空間作りの推進
   エ.市民の参加、協同による緑のまちづくりの推進
  2)数値目標
   (例.目標年度2020年)
   ア.緑地の目標 ⇒ 市街地の30%
   イ.都市公園等の整備目標 ⇒ 一人あたり20㎡
   ウ.大規模公園 ⇒ 一人あたり3㎡
  3)緑の場所・望まれる場所
   ア.公共物:公園、道路、公共建物、学校、河川、調整池他
   イ.準公共:寺社、鉄道敷地
   ウ.民有地:会社、工場、商店、住宅、空地、駐車場、農地
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(語らいの場、憩いの場となる緑の道)          (当社の屋上緑化)
  4)これからの重点緑化
   ア. 既存施設:公共建物,道路景観,まち並み景観
   イ. 屋上,壁面
    ア) 屋上緑化:眺望が良い、都会の中のオアシス、安全な行楽地、非日常空間
    イ) 壁面緑化:視覚的に効果が大きい緑のカーテン
    ウ. 内容、質の充実
    エ. 色彩空間の演出
  5)課題
   一体化(連携化、ネット化,環状化)効率化、景観形成

緑や花の役割・効果

  1)緑が持つ6種類の環境機能
   ① CO2の固定    ②大気の浄化  ③気象緩和
   ④ 生物多様性の維持  ⑤景観の向上  ⑥防災

  2)6つの効果
   ① 心にプラス(緑にいそしむ、緑に親しむ、園芸療法、作業療法)
   ② 体にプラス(芝生地は疲労度が少ない)
   ③ 環境にプラス(屋敷林、室内の緑)
   ④ 防災にプラス(阪神・淡路大震災)
   ⑤ 経済にプラス(森林・水田の効果)
   ⑥ 景観にプラス(構成者、主役、引き立て役)
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  3)公園の効果
   ① 潤い・癒し        ② 健康づくり  ③ ペット等の運動
   ④ 生きがいの発見と学習等  ⑤ 防災     ⑥ 生物の生息
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(当社がコンサルした水と親しむ原っぱ感覚の街区公園)

  4)街路樹の効果
   ① 景観    ② 緑陰      ③ 空気清浄    ④ 騒音の緩和
   ⑤ 季節感   ⑥ ビル風の緩和  ⑦ 生物生息空間  ⑧防災
   マイナス面
   ① 日照障害  ② 病害虫被害   ③ 台風時の倒木
   ④ 視界不良  ⑤ 管理費の増大
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  5)人が創った森・人が植えた木
    ・明治神宮の森:約70Ha、11万人の青年が参加、1920年完成   約50年で構想した森が完成
    ・宮城県「称名寺のシイ」
      (国指定天然記念物、自生北限を超えて生育、植栽されたものと云われ人々の思いがこもる)
    ・東京都日比谷公園の「※首賭けイチョウ」
      ※日比谷公園の設計者である本多静六博士が、明治34年現在の日比谷交差点にあった
       移植不可能とされていたイチョウの大木を「自分の首を賭けても移植を成功させる」
       と言って、見事日比谷公園内に活着させた木です。
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称名寺のシイ(C)色撮り撮り             ※首賭けイチョウ(C)デジカメ日記

樹木や花による都市の再生

  1)緑のアピール
   ① まちの緑を増やす
   ② 金額で効果を示す
   ③ 生えるのは簡単、生やすのは大変
   ④ 足し算の緑化から勇気をもって引き算の緑化へ
   ⑤ 身近な緑、ブロック塀の緑化
   ⑥ ガーデニングの活用
   ⑦ 緑や花のコンクールの企画・開催
  2)緑のマイナス効果
   ① 植え込み地のごみ溜め化(異臭、衛生問題、美観)
   ② 藪化(犯罪、安全支障)
   ③ 濃密、密生樹林地(見通し不良、鬱陶しさ)
   ④ 集合住宅における濃密植栽、採光不良(陰気、藪蚊侵入)
   ⑤ 街路樹の肥大、大木化、老齢化、過繁茂(舗装破壊、平板持ち上げ)
   ⑥ 鳥害(フン公害、鳴き声)
   ⑦ 病害虫(チャドクガ、アメリカシロシトリ、テングス病)
        
    こうならないための方策
     ◎ 協働によるまちづくり
     ◎ 多種多様なグループ、個人の参加(市民参加、県民参加)
     ◎ 意識改革
  3)植物の能力を生かす
   ① つる植物による緑化(壁面緑化、緑のカーテン)
   ② 水に強い植物の活用
   ③ アレロパシーを緑化に生かす  アレロパシー=植物排他性
   ④ タケやササの活用
   ⑤ 都市に落葉樹を
   ⑥ 色彩の美しい街へ
        
      ◎能力第一主義から修景的効果を有するものに
      ◎植物による環境修復(例  ホテイアオイ、ヒマワリ)

緑の維持、保全。創出、再生

   ◎ 21世紀は再緑化の時代
   ◎ 都市の緑は大きく育てる場所と大きくしない場所の区分、わきまえ
   ◎ 勇気ある大胆な計画(間引き、間伐の考え)の立案と実践
   ◎ 都会の緑、街路樹や公園緑地は維持管理が全て
   ◎ メンテナンスフリーは困難(省管理技術の研究)
         ⇒ 特に屋上緑化、ビオトープは注意を要する(藪化の進行)
   留意点
    ○ 緑化効果が早められるように
    ○ 最大効果が得られるように
    ○ 継続して一定の管理ができるように
    ○ 協働してバックヤードの充実に努める(安定供給、新たな挑戦)
   緑に修景効果プラス楽しさと親しみやすさを
    ○ まちに見どころ、名所をつくる
    ○ まちに巨樹・古木がある
    ○ 協働で植えた樹木が大きく枝を広げ、花が咲き、実をつけている
    ○ 公園のリニューアル(芝生化、花の植え付け)
    ○ 校庭の芝生化
    ○ 樹名板の取り付け
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校庭の芝生化 若宮小学校校庭 (C)中野区

みどりづくりへの参加

 ~健全な緑の育成・都市の景観づくりのために~

  1)情報の提供
  2)形態、組織
    ○ ボランティア
    ○ NPO法人
    ○ アダプト制度
    ○ 緑の応援団
    ○ その他
  3)課題
    ○ 組織の受け皿をどうするか、システムをどうするか
    ○ 何ができるか、どこまでできるか、適切な指導はできるか
    ○ 費用、財源の確保
    ○ 成果の検証、発表
    ○ 継続の大切さ

PR、啓蒙

  1)イベント・行事
    ○ 写真コンクール、絵画コンクール
    ○ 苗、種子の配布
    ○ 表彰制度
    ○ 各種緑化イベント
  2)知る機会の提供
    ○ 緑の相談所(園芸相談、園芸教室)
    ○ 自然観察会
    ○ 子ども樹木博士講座
    ○ その他

おわりに

緑豊かで美しい都市は、健全で環境にも優れています。その主役が樹木を中心とする植物群です。しかしながら植物はあくまでも生命体の一員です。限られた空間、都市環境の中で懸命に生命を育んでいますが、過繁茂、病害虫、倒伏、根の発育による被害等、多くの課題を含んでいます。また昨今は管理費用の逓減も追い打ちとなり、都市の緑を囲む状況は厳しさを増しています。
このような中で、市民、民間、行政との協働による街づくり、緑の育成管理が今こそ必要な時はありません。(樹木医 富塚 武邦)
  ◎緑と人間との良好な関係による都市づくり
  ◎緑の育成、健全化は、多くの人たちの理解と協働によってのみ可能

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